地震後の安全確保に有効なツール
土岐憲三 京都大学名誉教授・立命館大学歴史都市防災研究センター長
強い地震動の際には、電気が使用できなくなることが多いが、電力は地震災害への緊急対応や復旧などには不可欠であるから復旧されるのも早い。
このとき、たとえばコンセントにつながっている電熱器のような発熱体に電流が戻る場合、地震で壊れた家や家財が着火する通電火災が起きる。
一方、冷蔵庫やベッドなど動かすことの少ない家財の後ろのコンセントには、ほこりなどが積もる可能性が高く、
このようなほこりが通電体となって火災が生じるトラッキング現象が各地で起きている。
これらの地震時の通電火災やトラッキング現象に対応したコンセントを第一通商が開発して販売されている。
世界遺産である東寺や清水寺には既に取り付けられており、火災を防ぐ観点からは優れた器材であり、いろいろな分野にも広がりつつある。
室崎益輝 関西学院大学総合政策学部教授・災害復興制度研究所所長
阪神・淡路大震災では、震災直後に同時に多数の火災が発生して、市街地が火の海になった。
その火災原因の一つとして、通電等による電気の火花が考えられる。
この電気火災による火災を防ぐうえで、地震時に火災につながる熱源を緊急遮断することが欠かせない。
この緊急遮断を技術的に可能にするものとして、感震コンセントが開発された。
この感震コンセントの普及により、市街地火災の発生が抑制され、人命はもとより貴重な文化財も守られるものと期待している。
田中哮義 京都大学防災研究所教授
よく地震の時にはガスコンロを止めろ、電気コンセントを抜けと教えられる。
しかし本当に大地震に遭遇して、物は落ちかかって来るは、家具は倒れかかって来るはの危険の中で、そのように落ち着いた行動が出来る人は稀であろう。
わが国では昔から多くの文化遺産が火災によって失われてきた。
地震の大揺れが来たときに自動的に電気を遮断してくれるコンセントが寺社のみならず一般住宅等にも普及すれば、
かけがえのない文化遺産を地震から護るうえでも効果が大きいと思われる。
川瀬博 京都大学防災研究所教授
いつ起こるかわからない都市域での地震災害を防ぐ為には、建物を崩壊させないことと同時に火災の発生を防ぐことが非常に重要です。
そういう意味で、今回開発された振動検知機能を有するコンセントは、地震後の通電火災を防止するために非常に有効な手段です。
現在の我々の文化的生活は大きく電力供給に依存しており、接続されている機器も多岐にわたっています。
それらすべてに対して地震後の混乱した時期に安全性を確認して接続することは実際上は不可能です。
火災の発生を防ぐことは本人のみならず都市全体の安全性を向上させるものであり、貴重な文化財周辺の建物のみならず、
広くその取り付けが推進されるべきものであり、ここに強く推薦します。
一般に、火災原因というと「ガスコンロ」「ストーブ」「寝たばこ」などを連想しがちですが、
実は「電灯電話等の配線」「配線器具」も大変大きな出火原因となっています。
消防庁の2008年の調査では、30,053件の火災の内、約7%の2,065件が「電灯電話等の配線・配線器具」からの出火が原因でした。
消防庁でも、火災予防の重点課題として、「たこ足配線やトラッキング等による電気火災防火対策」をあげています。